あなたがもし、配偶者から暴力を受けているとしたら、先ずは警察や公的機関に相談することをおすすめします。
そのとき、行政は被害者であるあなたをどんな形で保護し、助けてくれるのでしょうか。
また、加害者である配偶者に対しては、どんな措置がとられるのか。具体的な保護の内容や、法的措置について知っておくことが大切です。
DVとされる具体的な行動とは?
実際に DVとされる暴力とはどんなものでしょうか。
ドメスティック・バイオレンス(DV)は直訳すると、家庭内暴力。子供が家族に対して振るう暴力と紛らわしいため、配偶者による暴力といい表されています。具体的には以下の行動がDVとされています。
- 身体的暴力 殴る、蹴る、首を絞める、刃物で傷つける、物を投げつける、など直接身体を傷つける行為。
- 精神的暴力 無視する、見下した言い方をする、長時間説教する、大切なものをわざと壊すなど、わざと心を傷つける行為
- 社会的暴力 交友関係や電話を細かく監視する実家に帰らせないなど被害者を社会的に孤立させる行為
- 経済的暴力 生活費を渡さない、お金を取り上げる、外で働かせないので、経済的に困窮させる行為
- 性的暴力 セックスを強要する、避妊に協力しない、中絶を強要するなど、性的なことを強要したり抑圧する行為
- 子供を利用した暴力 子供に暴力を見せる、子供を取り上げるなど、子供を使って追い詰める行為
このように、身体的暴力に限らず、精神的な暴力などもDVに含まれています。
配偶者からこういった行為をされていたら、警察や地方公共団体に設けられた相談窓口に訴え出て、保護を求めることができます。
相談機関では、保護から経済的自立までを支援
DV被害を受けたときの窓口は、各都道府県や市町村に設置された配偶者暴力相談支援センター、福祉事務所などです。
緊急性が高い場合や休日・夜間は、警察に連絡するとよいでしょう。
DVは離婚事由になり、暴力によっては、加害者に傷害罪を問うことができます。暴力の内容や早いの様子と説明できるような写真、録音データ、日記などがあれば、相談するときに役立ちます。
配偶者暴力相談支援センターでは、以下のような対応をしてくれます。
- 被害者の相談に応じる
- 被害者の心身の健康の回復のための医学・心理学的助言
- 被害者の自立のための情報提供と援助
- 保護命令の制度の利用についての情報提供、その他の援助
- 被害者を居住させ保護する施設の利用について情報提供
相談機関の支援を得て、DV被害者は加害者から身を隠しながら、DVを離婚原因として離婚手続きを行うとともに、心身の健康回復や自立への準備に努めることができます。
シェルターとも呼ばれている保護施設は、婦人保護施設などのほか、民間団体の施設もあります。
保護命令を出してもらうには?
保護命令を裁判所に出してもらうには、加害者か被害者の所在地もしくは居住、暴力行為が行われた場所を管轄する地方裁判所に、保護命令申立書を提出します。
申立書に記載する内容は以下の通りです。
- 配偶者から暴力を受けた状況
- 配偶者からの暴力により、被害者の生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認められる事情
- 配偶者暴力支援センターの職員や警察官に相談したり、援助や保護を求めたことがあるかどうか(ある場合は以下の事実を記載)
- 相談した配偶者暴力相談支援センターや警察職員の所属官署の名称
- 相談、または援助や保護を求めた日時や場所
- 相談、または求めた援助や保護の内容
- 相談、または申立人の求めに対して執られた措置の内容
保護命令の発令と、加害者が違反した場合の刑罰
保護命令の申立書が地方裁判所に出されると、口頭弁論か加害者を呼び出して意見を聞く審尋が行われます。
口頭弁論とは裁判官の面前で口頭によって当事者、またはその代理人が行う弁論のことで、審尋とは、裁判所が訴訟当事者や訴訟関係人に、陳述の機会を与えることです。
この手続きを経なければ、裁判所は保護命令を発することはできません。ただし、緊急性があるなど、時間が経つことによって保護命令申立の目的を達することができない場合は別です。
保護命令は期日における言い渡しか、決定書の郵送によって効力を生じます。加害者は高等裁判所に即時坑告(不服を申し立てること)ができますが、即時坑告をした場合も、保護命令には効力があります。
裁判所から保護命令が発令された場合、加害者がこれに違反すると、1年以下の懲役か100万円以下の罰金刑が与えられます。
裁判所から出される保護命令は、以下の通りです。
①被害者への接近禁止命令
被害者へのつきまといや被害者への住居・職場等の近くを徘徊することを禁止する命令で、期間は6カ月です。
②被害者の親族等への接近禁止命令
被害者と同居する未成年者の子どもへのつきまといや子の学校等の近くを徘徊することを禁止する命令で、被害者への接近禁止命令と併せて発令されます。
子どもが15歳以上の場合は、子どもの同意がある場合に限ります。
③被害者の親族等への接近禁止命令
被害者の親族等へのつきまといや親族等の居住地の近くを徘徊することを禁止する命令で、被害者への接近禁止命令と併せて発令されます。
④退去命令
被害者と加害者が生活の本拠を共にする場合、加害者にその居住地からの退去及び住居の付近の徘徊の禁止を命ずる命令で、期間は2カ月間です。
⑤接近禁止命令と併せて申し立てられる禁止行為
被害者に対する面会の要求や著しく粗野で乱暴な言動、連続しての電話やFAX・電子メール、夜間(22時から6時まで)の電話やFAX・電子メール、汚物や動物の死体など嫌悪感を抱かせるものを送ること、名誉を害する事項を告げること、性的羞恥心を害する事項を告げたり、性的(卑猥)なものを見せたり聞かせたりして、辱めを与えるような発言や文書などを禁じています。
保護命令に違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
配偶者暴力防止法の改正点
配偶者暴力(DV)防止法の一部が改訂され(2014年1月より施行)、名称も「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」と改められました。
これまでのDV防止法での適用対象を「結婚する意志はないが、生活の本拠を共にする交際相手」にまで拡大し、ストーカー規制法による禁止命令の適用が難しいとされる、同居する交際相手からの暴力の防止と被害者の保護を可能にしました。
DVで離婚をするためには証拠が必要
暴力は協議離婚の原因の上位にあげられていますが、意外かもしれませんが、法定離婚原因にはなっていません。
しかし裁判では、法定離婚原因の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあてはまるとして、厳しい判決が下されています。つまり、離婚を成立させるには配偶者に離婚原因があると証明できる客観的な証拠が必要です。証拠となるのは以下のようなものです。
- 暴力行為や暴言を示す映像、録音、メール
- 壊れた物品や怪我をした時の写真
- 物品修理の見積書、傷病に係る医師の診断書
- 家族や友人等の周囲の人間による証言
- 日常的な被害を記録した日記・備忘録 など
配偶者からのDV被害を受けている人の中には、「いつかは心を入れ替えてくれるだろう」と、我慢し続けている人もいますが、この先、自然と改善する可能性は低く、いずれエスカレートして命に危険が及ぶ可能性も出てくるかもしれません。
自分の身を守れるのは自分だけですし、もし子どもがいる場合には子どもの安全、健全な育成が最優先事項です。自分や子どもの人生を守るため、勇気をもって決断をするのが大切です。
可能な範囲で客観的な証拠を集めることも必要ですが、先ずは、一人で悩まずに専門の相談機関にご相談下さい。
探偵がDVの問題でお役に立てることは少ないと思いますが、もし、離婚を望んでいる状態で、配偶者の浮気が明らかな場合は当探偵社までご相談ください。
浮気調査で配偶者の不貞行為の証拠を掴むことができれば、それを理由に離婚をすることが可能です。